渡辺:
そのほか、昔の家ならではの特徴などありますか。
佐伯:
昔は、土間や板の間、檜風呂、草履に下駄…自然の恵みを存分に生かして生活していました。肌で自然と触れ合うことによって育まれる知恵は、なにものにも代え難いことを知っていたのです。
渡辺:
木の文化も素晴らしいですよね。
佐伯:
昔の人は、木の特性を知り尽くしていて、それを生かしていました。
渡辺:
お手洗いに消臭効果を持つ樟(クスノキ)を用いたりするのも、そのひとつですよね。
佐伯:
そうです。それに、木は季節によって香りが変わります。切られてしまっても、それは変わらないんだそうです。例えば、4月になれば桜の木はその香りを出す。ものすごいパワーを持ったものなんですよね。木の持つ“気”が伝わって、人に安らぎを与えてくれる。自然の壮大な力を感じる家で暮らすと暮らさないでは、得るものが大きく変わるのも当然ですよね。
渡辺:
柔らかい木は、例えへこんでしまっても水を一滴垂らすと再生する。けれど、今の若い人はそういったことを知らない方が増えていますよね。
佐伯:
私たちの時代は、板の間はそっと歩くことや、土器や陶器を気をつけて扱うこと。壊れやすいもの・繊細なものの接し方を大人から教わり、子どもの頃から身近に感じていました。ものを大切に扱うことを学んでいます。けれど、今の住宅環境はそれを学ぶ機会がなかなか作れなくなってしまっている。壊れないもの・丈夫なものは、祖末に扱っても問題ない。だから、人やものを大切にできない人が増えてしまうんです。そこに危機感を感じます。
渡辺:
そんな話をしているときに、木を知り木を愛する方々とも知り合えて。運命の巡り合わせを感じました。
佐伯:
本当に。伝統は、後世に継承していかなくてはいけないんです。今の若い世代の人たちは、そういったことを知らないだけ。そのようなプロジェクトを始めようと動き出した最中にそんな方々と知り合えたことは、大変幸運だったと思います。
渡辺:
だから、今回先生と一緒につくらせていただいたモデルハウスにも木が多用されているんですよね。