2024.06.15
伊東 朋哉
こんにちは。住空間設計Laboの伊東です。
今回も、明石モデルハウスの換気システムについて
お話ししたいと思います。
前回は「第3種換気(排気は機械、給気は自然給気で行う)」の方式をとりながら、
熱交換も行う仕組みについてお伝えしました。
よくある、「第1種換気(給気も排気も機械で強制的に行う)」の方式による
「全熱交換型換気システム」ではなく、この方式を採用したのは、
以前に何度かお話ししました、「水蒸気」の移動が理由に関係してきます。
熱交換システムには、「全熱交換」と「顕熱交換」の大きく2つの仕組みがあります。
どちらも、給気と排気の空気間で熱の移動が行われますが、
「全熱交換」が熱と湿気(水蒸気)の両方を交換するのに対して、
「顕熱交換」は熱のみを交換する仕組みです。
一般的に熱交換システムの商品と言えば、全熱交換型の第1種換気システムが多いのですが、
そのメリットは、湿気も熱と一緒に移動するため、効率よく熱が交換できるという点です。
熱回収率が高い。とも言いますが、商品カタログなどを見ると、
よく「熱交換率○○%」などと表現されています。
では、なぜ効率よく熱交換できる「全熱交換」ではなく、「顕熱交換」の仕組みを採用したかというと
湿気(水蒸気)も交換することで生じるデメリットの方を解消したかったからです。
そのひとつがCO2も交換してしまうことです。
全熱交換型の換気システムは、下の絵のような「熱交換素子」と呼ばれる部材が本体にあり、
ここで給気と排気が交差し、熱と湿気の交換を行います。
実はCO2分子の大きさは、水蒸気の粒子の大きさよりも小さいため、
水蒸気を通す熱交換素子は、CO2も通してしまいます。
本来、換気の目的は、室内の汚れた空気や臭気、人から排出されたCO2を家の外に出し、
新鮮な空気を室内に取り入れることですが、そのCO2が熱や湿気の交換と同時に、
室内に戻ってきてしまうことを避けたい。というのが理由のひとつです。
さらに、もうひとつ理由があります。
それは、全熱交換による「結露」のリスクを抑えたい。ということです。
以前、壁内結露を防ぐために、「防湿施工」が大切。という話をしましたが、
あの理屈と同じで、
全熱交換により、湿気(水蒸気)が移動することで、換気システム本体内での
結露のリスクが高まります。
例えば、冬場、室内温度が24℃で湿度50%とすると、
室内空気の露点温度は、湿り空気線図から約12℃となります。
絶対湿度(水蒸気量)が変わらなければ、12℃で結露が発生することになります。
仮に、外気温が5℃だとすると、
熱交換が行われる本体の中で、必ず12℃のポイントは存在します。
ここで、室内と同じ水蒸気量の状態であれば、結露してしまいます。
湿気は絶対湿度が高い方から低い方へと、常に移動するのでそのリスクは常に生じます。
もし、換気システム本体内で継続的に結露が発生すると、
給気した空気と一緒にカビを室内に取り入れてしまうリスクもあります。
こうしたリスクを解消するため、
明石モデルハウスでは、自然給気(第3種換気)により取り込んだ新鮮な空気を、
床下で長い距離を移動させることで、徐々に室温に近づけてから、
換気ダクト内で排気との熱交換を行うという、
段階的な熱交換によって、建物内の温度帯域に露点が出来ないように計画しています。
最後にもうひとつ、
明石モデルハウスでは、換気システム本体を通って、外に排出する空気は、
エアコンの室外機に当てるようにしています。
これによって、床下空間、換気ダクト内、エアコンの室外機の3箇所で顕熱交換を行い、
換気による熱損失を削減し、効率的な換気を実現しています。