佐伯:各々の木の性格に合わせて配置して、木の持つ良さを最大限に生かしたモデルハウスができましたよね。
渡辺:300年ものの天然杉を使ったTV台など、自然の恵みを思う存分贅沢に使わせていただきました。
佐伯:本当に素晴らしいですね。
渡辺:キッチンの位置にもこだわりました。キッチン・リビングは、会話のきっかけとなる場所です。キッチンから中庭まで見えるので、お母さんが料理しながら家族の様子が伺える。あるいは、美しい花木を眺めながら食事を作れる。家族が常に会話できる場を緻密に具現化できたと思います。
佐伯:家の中心は“キッチン”という思いがずっとありましたのでうれしいです。
渡辺:あとは、踊り場のような空間を家族の憩いの場としてそれぞれの家族が自由に使うことができるように、例えば“和室”とか“洋室”とこちら側が限定せずに遊びの空間を持たせているのもこだわりのひとつですね。そうすれば、住まい手が家づくりの過程でそれぞれ見つめ直し、考え、成長することができますからね。
佐伯:そうです。“住まい”は自分で育てるものなのです。
渡辺:住み続けることでさらに学び、それが生活の知恵となるんです。木の匂い、風の通る中庭、障子からこぼれる陽射し…五臓六腑に染み渡るような、五感が蘇るしかけをしています。
佐伯:五感を最大限に使って、自然素材を感じることができる“住まい”ですね。それが、どれだけ人間形成に重要な役割を果たすか。人間形成とは、五感の品格。その人自身の中心であるのです。感性を豊かに育ててあげることは、その人の自信にもつながります。それが、私の“住まい”へのこだわりです。そんな“住まい”へのこだわりをみんなそれぞれが持つべきですし、家族とどう関係性を築いていくのかをしっかり考えて“家”を持つべき。明確な目的を持って生きていくことが大事なんです。
渡辺:人と住まいの関係をもう一度見直すことが大事ですね。住まい手が“住まい”にどう関わり、どう生きていくかを自ら真剣に考える。そこで生み出された“住まい”は愛着が生まれるし、同時に永きに渡り大切にされる。そんな“住まい”は、まさに理想ですね。
佐伯:今までは“美容”を通じて“生き方”を発信してきました。新たなステップとして、今回は“家づくり”から“生き方”発信することができました。日本の素晴らしい伝統・生き方をを次の世代に繋げていく橋渡しとなればいいなと思います。
(取材・文/中津悠希)